「タクシードライバー」
76年のアメリカ映画。マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演。
ええ、いい映画でしたよ、もちろん。
主人公の孤独と狂気が非常に上手く描かれていてとてもわかりやすいですし、ある種の格好良さもたっぷりで、社会派映画としてはかなりの成功を収めていると言えるでしょう。
ジョディ「羊たちの沈黙」フォスターがこのとき13歳だったとは!才能の片鱗をガッツリ覗かせています。ロバート・デ・ニーロの格好良さと演技の上手さは、今更いうまでもないでしょう。
それでもイマイチピンと来なかったのは、私が所謂「社会派」と呼ばれる映画や物語があまり好きではないからかもしれません。
「社会的なテーマ」であるとか「特定のイデオロギーに対するアンチテーゼ」と言ったものは、優れた物語に付き物ではありますが、それはその物語が優れていることに付随する結果であるべきで、テーマを語ることを物語そのものを語ることより優先すべきではないと考えるからです。テーマが先行してしまうと、そのテーマに共感もしくは反発を覚えない人には楽しめなくなってしまいます。
あるいは私がもし当時(70年代)のアメリカ人で、劇場でこの映画を観たのであれば全く違った感想になったであろうことは想像に難くありませんが。
この映画が名作として知られているのは、「ベトナム帰還兵の孤独と狂気」というテーマが現代社会において人々が感じている孤独と照らし合わせても普遍的であるから、とみなされていることが大きいと思います。
「周りはみんな幸福そうに見えるが、自分だけは違う。疎外されているように感じる。このままではいけない、何か大きなことをしたい。何者かになりたい」
そういった思いから取ってつけたような正義感や使命感に酔い、狂気を深めていき、側から見れば理由のない罪を犯す。
確かにこれは普遍的なテーマたり得るものであることはわかります。
あれ、書いてるうちになんか自分にとってもいい映画だった気がしてきた…!
でもなぁ、共感できる人物が一人も出て来ないんだよなぁ。あ、ドライバー仲間のハゲ(ウィザード?)がいるか。あの人の言ってることはその通りだと感じました。
魅力的な悪役、と言えば主人公が一番それに近いけど、でも、自分の行動の動機に無自覚なところとか、結局議員は殺せてない辺りからあんまりなあ。結局たまたまで救われちゃってるし…。
もっと年取ってから観たらまた違うのかな?
また機会があったら見返したいです。そのくらいのことを思わせる力は確かにあります!